寺田寅彦の随筆の中に、鉛を食う虫の話が出ていた。鉛で出来た水道の配管に穴があくので調べたら虫が食っていたという。その虫の糞は鉛色に輝いていて、食べた鉛のほんの少しを取りいれてほとんどの部分を排泄しているらしい。ムダな行為であるが大量の鉛を食わなければ生きられないらしい。 昼休みに日本橋の丸善に良く行ったら、レジに行列ができていた。ハードカバーの高価そうな本を買っている人も少なくない。活字離れと言われているが、世の中には本好きが多いようだ。私もその中の一人で欲しい本だと懐に相談しないで、すぐに買ってしまう。 買った本は、まえがきくらいを読んほったらかしてある。買ったまま何年も寝かせているものもあるし、読み始めても最後まで読みきらないものもある。思った通りの感動にありつける本に出会えることはまれである。 家人からは、部屋じゅうに積まれた本が邪魔だと言われる。読み終えた本はさっさと処分したらどうかと言われる。でも、それができない。この本の山があるからこそ、好きな本に出会うことができるのではないかと思う。鉛を食うのように一見ムダと思えるものが重要な役目を果たしていることがあると思う。