最近は、告別式のあとに初七日を済ませてしまう家が多い。先日も、南部斎場の告別式の後に、宝樹院で初七日の法要が行われた。そのあとの精進落としの席上で面白い話を聞いた。献杯の発声がすんで、和やかな雰囲気になった所で、隣りに座った長老が話しかけてきた。
「ふるさと侍従川に親しむ会の会報、いつも読ませてもらっているよ。”私が子どもだった頃”という話がおもしろいね」
「おじいさんも会員なんですか」
「そうなんじゃ。私は、ここに一世紀近く住んでいる。古い話に興味があるのなら、珍しい話を聞かせてあげよう。どこにも書かれていない話だよ」
「ぜひ、おねがいします」
「大道の地形は、戦争で大きく変わったんじゃ。六浦から大船に抜ける道は、戦争の物資を運ぶために作られたんじゃ。それまでは、畑の中をくねくね曲がる道だった。昭和15年頃に軍隊が強制的に地主から土地を取り上げて今の道路を作ったんじゃ」
「ひどい話ですね。まるで北の方のどこかの国みたいじゃないですか」
「そんな時代じゃったんだ」
「どこに、何を運ぶ道だったんですか?」
「実は、その先に、山をくり抜いた兵器工場があったんじゃ」
「なんだか、映画やマンガに出てくるような話ですね」
「本当の話だよ。厳重に監視されていたので中には入ったことはなかったが、入り口から覗いたことがある。遠くがかすむくらい広い工場だった」
「何を作っていたんですかね」
「詳しいことは分からないが、近くには兵器を作っている会社がたくさんあったから、そこに部品を供給していたんだと思うよ」
「その兵器の部品を運ぶために道路だったんですね」
「そうじゃ」
「終戦になったときに、そこから兵器を作る材料を持ち出して大儲けしたやつもいたんだよ」
「そりゃ、泥棒じゃないですか」
「戦後の、ごたごたの時は、そんなことは言ってられないんだよ。早いもの勝ちで、先に見つけて売りさばいたものが勝ちだったんだよ」
「山をくり抜いた兵器工場は、今でもあるんですか」
「埋め戻したということは聞いていないので、今でもそのままだと思うよ。」
「見てみたいですね。入り口はどのあたりにあったんですか?」
「この先に相武隋道という長いトンネルがあるのを知っているね。実は、そのトンネルの中ほどに兵器工場の入り口があったんじゃ」
「えっ」
「今は、入り口はセメントでふさがれているが、あの辺りの山の中はガランドウだと思うよ」
「へ〜」
と、こんな話が続いた。長老の話は止まらなかった。(続く)
「ふるさと侍従川に親しむ会の会報、いつも読ませてもらっているよ。”私が子どもだった頃”という話がおもしろいね」
「おじいさんも会員なんですか」
「そうなんじゃ。私は、ここに一世紀近く住んでいる。古い話に興味があるのなら、珍しい話を聞かせてあげよう。どこにも書かれていない話だよ」
「ぜひ、おねがいします」
「大道の地形は、戦争で大きく変わったんじゃ。六浦から大船に抜ける道は、戦争の物資を運ぶために作られたんじゃ。それまでは、畑の中をくねくね曲がる道だった。昭和15年頃に軍隊が強制的に地主から土地を取り上げて今の道路を作ったんじゃ」
「ひどい話ですね。まるで北の方のどこかの国みたいじゃないですか」
「そんな時代じゃったんだ」
「どこに、何を運ぶ道だったんですか?」
「実は、その先に、山をくり抜いた兵器工場があったんじゃ」
「なんだか、映画やマンガに出てくるような話ですね」
「本当の話だよ。厳重に監視されていたので中には入ったことはなかったが、入り口から覗いたことがある。遠くがかすむくらい広い工場だった」
「何を作っていたんですかね」
「詳しいことは分からないが、近くには兵器を作っている会社がたくさんあったから、そこに部品を供給していたんだと思うよ」
「その兵器の部品を運ぶために道路だったんですね」
「そうじゃ」
「終戦になったときに、そこから兵器を作る材料を持ち出して大儲けしたやつもいたんだよ」
「そりゃ、泥棒じゃないですか」
「戦後の、ごたごたの時は、そんなことは言ってられないんだよ。早いもの勝ちで、先に見つけて売りさばいたものが勝ちだったんだよ」
「山をくり抜いた兵器工場は、今でもあるんですか」
「埋め戻したということは聞いていないので、今でもそのままだと思うよ。」
「見てみたいですね。入り口はどのあたりにあったんですか?」
「この先に相武隋道という長いトンネルがあるのを知っているね。実は、そのトンネルの中ほどに兵器工場の入り口があったんじゃ」
「えっ」
「今は、入り口はセメントでふさがれているが、あの辺りの山の中はガランドウだと思うよ」
「へ〜」
と、こんな話が続いた。長老の話は止まらなかった。(続く)
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