年末が近くなって残り少なくなったカレンダーを見ると、この前、正月に雑煮を食べたのに、もう1年経ってしまったのかと愕然とする。歳を重ねるたびにどんどん速くなっていくこの時の流れをどうにかコントロール出来ないものだろうかと思っていた。今の時計は、本当に正確に時を刻むようになった。電波時計なら時間を合わす必要もない。こんなに時計が正確になったのに、時の流れが速く感じるというのは、どうも納得がいかない。そこで、時の流れが速くなる原因について私なりに考えてみた。
1)記憶力の衰え
歳をとると、記憶力が衰えるのは確かなことだ。記憶力では子供たちに太刀打ちできない。歳をとると直近の記憶が抜け落ちてきて、昨日食べた昼飯のおかずが思い出せないことがある。しかし、意外に古いことは憶えているから不思議だ。年の暮れになると正月の出来事が夏休みの記憶より鮮明によみがえってくる。そして、結果的にあ〜もう、1年経ってしまったのかとなる。
2)生きてきた時間の長さ
5歳の子供にとっての1年間と40歳の大人の1年間では、1年間の長さの感じ方は8 倍の違いがある。100メートル歩いた後の10メートルと1000メートル歩いた後の10メートルでは、後者のほうが短く感じることだろう。これと同じことが時間でも言えるのではないか。100歳くらいになったときの時間の感じ方を体験してみたいものだ。
3)反応の衰え
子供のときは、速く走れたし,反応も速かった。歳をとると物事をこなしていくスピードや何かを見て判断するまでに時間がかかるようになる。時の流れは一定なので、物事を認識する反応が遅くなれば、相対的に時間が速く流れるように感じる。川の流れにそって歩いているとき、元気で歩くスピードが速いときは、川の流れが遅く感じるが、疲れてきて歩くのが遅くなると流れが速く感じるのと同じことだ。
4)生理的な変化
動物が一生涯に打つ鼓動の数は大体同じだと言われている。ねずみのような小動物は鼓動が速く時の流れを遅く感じ、象のような大型動物は速く感じるらしい。子供の鼓動は大人より確かに速い。小さい子供の胸に手をあてて鼓動を調べると、猛烈な勢いで打っていることがわかる。このことからも、大人になると時を速く感じるのは必然のように思える。
5)好奇心の衰え
子供は好奇心でいっぱいだ。何でも不思議でたまらない。家中の電気製品のボタンを押しまくったり、ティッシュペーパーを部屋中にばらまいたり、とにかく何にでも興味を持って触りたがる。見るもの、聞くもの、みんな始めてというのだから、それは面白いだろう。毎日、海外旅行に行って異文化に触れているようなものだ。大人になると、始めてのことがだんだん少なくなる。その結果、退屈になって感動もなくなりドンドン時が過ぎていく。
6)時を意識しなくなる
時計の針をみているとなかなか、時間が進まないものだ。1分が随分長く感じられる。子供の頃は誕生日のお祝いやクリスマス、お正月、入学などの楽しいイベントがたくさんある。そのときが来るまで今か今かと待っている。それは、時計の文字盤を凝視している行為に近いのではないか。大人になると、誕生日が楽しいものではなくなってくる。養毛剤や老眼鏡をプレゼントされても、ちっともうれしくない。
7)多少のことでは驚かなくなる
大きい音やショッキングな場面などの強い刺激を受けた時間の方が長く感じる。年をとると、多少のことには驚かなくなり時間を短く感じる。
これらの考察から、歳をとると時の流れが速くなるのは、心理的な要因と身体的な変化に関係していることがわかる。体力の衰えは自然の摂理なので、それに逆らうことはできない。それでは、どうすれば時の刻みを遅らせることができるのか。
実は、自分が経験したことで時の進み方が遅くなったと感じたことがある。それは、結婚してからの何年かの期間だった。新しい生活が始まり、子供が生まれ、お宮参り、お節句などと忙しかった。ちょうどその頃、親父が亡くなり、初七日、四十九日の法要などいろんなイベントが重なった。今まで経験したことのなかったことの連続で、とにかく忙しかった。しかし、この何年間は、確かに時間が進むのが遅かった。
このように、時の進み方はその時にどんな過ごし方をしたかに関わってくるのではないかと思う。新しい体験をしているうちは、時の進みは遅く感じる。気持ちを子どもに戻すということが必要だ。慣れたことばかりやっているのではなく好奇心を持って、新しいことにチャレンジすること、毎日の単調な生活に安住しないで節目節目にちゃんと楽しい行事をやることなどが時の流れのスピードを抑制することではないだろうか。昔の人は、正月には初詣、2月には節分、3月は桃の節句など節目には忘れずに小さな年中行事をやっていた。お萩やお稲荷さんを作ったりしてみんなで、ささやかに楽しんだ。これは、生活にメリハリをつけて時の流れをくいとめる、昔の人が考えた方策の一つだったのではないだろうか。
「時計が止まるとき、時間は生き返る」というフォークナーの有名な言葉がある。
時は万人に平等に与えられ、黙って通り過ぎていく。時を刻む時計の中に物語はない。時の中に物語を作っていくのは人間にしかできない。人との出会いを大切にして、今という瞬間を大切に生きるということが、時の流れの速さを抑制する最良の特効薬と言えるのではないだろうか。
1)記憶力の衰え
歳をとると、記憶力が衰えるのは確かなことだ。記憶力では子供たちに太刀打ちできない。歳をとると直近の記憶が抜け落ちてきて、昨日食べた昼飯のおかずが思い出せないことがある。しかし、意外に古いことは憶えているから不思議だ。年の暮れになると正月の出来事が夏休みの記憶より鮮明によみがえってくる。そして、結果的にあ〜もう、1年経ってしまったのかとなる。
2)生きてきた時間の長さ
5歳の子供にとっての1年間と40歳の大人の1年間では、1年間の長さの感じ方は8 倍の違いがある。100メートル歩いた後の10メートルと1000メートル歩いた後の10メートルでは、後者のほうが短く感じることだろう。これと同じことが時間でも言えるのではないか。100歳くらいになったときの時間の感じ方を体験してみたいものだ。
3)反応の衰え
子供のときは、速く走れたし,反応も速かった。歳をとると物事をこなしていくスピードや何かを見て判断するまでに時間がかかるようになる。時の流れは一定なので、物事を認識する反応が遅くなれば、相対的に時間が速く流れるように感じる。川の流れにそって歩いているとき、元気で歩くスピードが速いときは、川の流れが遅く感じるが、疲れてきて歩くのが遅くなると流れが速く感じるのと同じことだ。
4)生理的な変化
動物が一生涯に打つ鼓動の数は大体同じだと言われている。ねずみのような小動物は鼓動が速く時の流れを遅く感じ、象のような大型動物は速く感じるらしい。子供の鼓動は大人より確かに速い。小さい子供の胸に手をあてて鼓動を調べると、猛烈な勢いで打っていることがわかる。このことからも、大人になると時を速く感じるのは必然のように思える。
5)好奇心の衰え
子供は好奇心でいっぱいだ。何でも不思議でたまらない。家中の電気製品のボタンを押しまくったり、ティッシュペーパーを部屋中にばらまいたり、とにかく何にでも興味を持って触りたがる。見るもの、聞くもの、みんな始めてというのだから、それは面白いだろう。毎日、海外旅行に行って異文化に触れているようなものだ。大人になると、始めてのことがだんだん少なくなる。その結果、退屈になって感動もなくなりドンドン時が過ぎていく。
6)時を意識しなくなる
時計の針をみているとなかなか、時間が進まないものだ。1分が随分長く感じられる。子供の頃は誕生日のお祝いやクリスマス、お正月、入学などの楽しいイベントがたくさんある。そのときが来るまで今か今かと待っている。それは、時計の文字盤を凝視している行為に近いのではないか。大人になると、誕生日が楽しいものではなくなってくる。養毛剤や老眼鏡をプレゼントされても、ちっともうれしくない。
7)多少のことでは驚かなくなる
大きい音やショッキングな場面などの強い刺激を受けた時間の方が長く感じる。年をとると、多少のことには驚かなくなり時間を短く感じる。
これらの考察から、歳をとると時の流れが速くなるのは、心理的な要因と身体的な変化に関係していることがわかる。体力の衰えは自然の摂理なので、それに逆らうことはできない。それでは、どうすれば時の刻みを遅らせることができるのか。
実は、自分が経験したことで時の進み方が遅くなったと感じたことがある。それは、結婚してからの何年かの期間だった。新しい生活が始まり、子供が生まれ、お宮参り、お節句などと忙しかった。ちょうどその頃、親父が亡くなり、初七日、四十九日の法要などいろんなイベントが重なった。今まで経験したことのなかったことの連続で、とにかく忙しかった。しかし、この何年間は、確かに時間が進むのが遅かった。
このように、時の進み方はその時にどんな過ごし方をしたかに関わってくるのではないかと思う。新しい体験をしているうちは、時の進みは遅く感じる。気持ちを子どもに戻すということが必要だ。慣れたことばかりやっているのではなく好奇心を持って、新しいことにチャレンジすること、毎日の単調な生活に安住しないで節目節目にちゃんと楽しい行事をやることなどが時の流れのスピードを抑制することではないだろうか。昔の人は、正月には初詣、2月には節分、3月は桃の節句など節目には忘れずに小さな年中行事をやっていた。お萩やお稲荷さんを作ったりしてみんなで、ささやかに楽しんだ。これは、生活にメリハリをつけて時の流れをくいとめる、昔の人が考えた方策の一つだったのではないだろうか。
「時計が止まるとき、時間は生き返る」というフォークナーの有名な言葉がある。
時は万人に平等に与えられ、黙って通り過ぎていく。時を刻む時計の中に物語はない。時の中に物語を作っていくのは人間にしかできない。人との出会いを大切にして、今という瞬間を大切に生きるということが、時の流れの速さを抑制する最良の特効薬と言えるのではないだろうか。
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