講師 JAXA 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 津田 雄一 氏
https://ers.nikkeibp.co.jp/user/contents/2019z1009xtex/index.html
日経 xTECH EXPO 2019の基調講演でJAXAの「はやぶさ2」の話をお聴きしましたので内容と感想をまとめました。
はやぶさのプロジェクトは今までも注目していましたが、今回、講演をお聴きして改めて成しえた業績の偉大さに感服しました。
簡単に言うと3億キロ先の“りゅうぐう”という小惑星の地表に描いた直径100メートルの的に矢を射るということです。気軽に3億キロと言いますが、日本からニューヨークの距離の3万倍、地球を7500周できるとてつもない距離です。りゅうぐうから発信した電波が地球に届くまでに20分かかるそうです。良くこのようなプロジェクトを思いついたと思います。
はやぶさ2の本体の寸法は、1.0×1.6×1.25 mと思ったより小さいのですが、理由はコストだそうです。津田さんは、本当はもっと大きなものを作りたかったと本音を漏らしていました。お金がないから何もできない、と弱音を吐くのではなく、限られたコストの中で出来ることをやるという考え方も良いですね。
このプロジェクトは、今までに誰もやったことがないことばかりで、何をやるにしても参考にする資料がないということでした。でも、前例がないから面白いということもあり、それがモチベーションの源泉になっているということでした。テストの時に、いかに多くの失敗をするかが成功につながるという話がありました。宇宙に行って失敗したら瞬時にゲームセットですからね。
りゅうぐうの重力は地球の八万分の1。物を運ぶのは楽ですが、地表には大きな岩がゴロゴロあって、間違って大きな岩の上に着陸したら一瞬にして計画が御破算になります。そのため、りゅうぐうの上空からターゲットマーカーというボールのようなものをいくつか投げて、思った所に落ちたマーカーを目指して着陸するそうです。着陸したら、筒のようなものを伸ばして、その中で地面に弾丸を撃ち込み、跳ね返ってくる土を採取するということでした。
現在、はやぶさ2は、最後の任務を果たし、帰還の準備に入っているということでした。帰還は2020年の年末になるようです。はやぶさ2を乗せたロケットは2014年の年末に打ち上げられましたので、なんと6年がかりのプロジェクトです。
このプロジェクトの企画や設計をするコアメンバーは10人ですが、メーカーや技術者を含めると600人もの人たちが関わっているそうです。このメンバーを動かしてプロジェクトを間違いなく前に進めていくのは並大抵なことではありません。
これだけのメンバーを動かすためには、どんな組織がにしていくかが重要だということでした。組織づくりで気をつけたことは次のようなことだそうです。
組織は極力フラットにする。リーダーだからと言っても偉いわけでなく、ミッションを遂行するための一つの機能でしかない。重要なのはリーダーに盲従するのではなく、ミッションや節理に忠実になること。フラットな組織は相互承認が速く風通しが良くなるということでした。
仲良しグループになって安易にまとまらないということ。必ず、対立軸を作って批判的な内容の提案を出すように心がけることが重要ということでした。これにより、プロジェクトの暴走が防げて、緊張感と当事者意識が高まるそうです。
組織内においては、責任分界点をはっきりしてそれに忠実に従う。例えばメーカーは探査機の動作に責任を持ち、JAXAはリスクテイクとプロジェクト成果に責任を持つなどです。自分の役割を明確にすることで自信を持ってアイデアを出せるようになるそうです。
リーダーがチームの責任を持つ。議論をし尽して、五分五分の判断になったときはリーダーが最後の決断をして責任を持つそうです。それで、メンバーが安心して仕事をすることができて、いざという時に突破力を出すことができるということでした。
組織は、次の段階を経て成長していくということでした。
① 草創期:ゴールの共有とチーム員個々の能力専門性の研鑽、勉強をする。リーダーの役割は適切な課題を割り当ててメンバーの専門性を見込んで任せること。
② 混沌・衝突期:自己主張をぶつけ合って互いに磨きあう。リーダーは、衝突の調整、課題の再配分、現場のアイデアを積極的に採用して、できるだけ多く失敗することを奨励する。
③ 一人格化・自律化期:互いの専門性を強めあい協働することでチームとして高い自律性と自己成長性を獲得する。この時期になるとリーダーは、権限を委譲してチームメンバーとして作業に参画し、次なるゴールの下準備をする。
④ 収穫期:高度なチームワーク、高度に類型化された分担で成果を量産する。リーダーは、シナリオ管理、課題管理を行い、次なるゴールの設定を模索する。
このようなチームが出来ると、大概のことはリーダーなしで、自律して進むようになるということでした。最終的にリーダーは実務をやりながらマネジメントすることになるのですが、これが重要だと言うことでした。
リーダーの役割は、変化を生み続ける場を提供すること。自分たちの進むべき方向性を示してメンバーのモチベーションやわくわく感を醸成すること、外部に対しては、プロジェクトの華々しい成果だけでなく、今までのメンバーの地道な努力や乗り越えてきた数々の課題を説明し、その先の未来を示すことだそうです。
宇宙探査は、一発勝負で事前に答えが分からない。だから面白い。チームは、ある時は神になって難題を自ら作り、ある時は人となってその問題を解決していかなければならない。そのためには、自分自身の能力を熟知して可能性を信じ、節理や論理に忠実に任務を遂行することができ、難題を突破できるチーム文化が重要ということでした。
感想
とにかく、このような一見無謀な常人は考えつかないプロジェクトを予算化して、いろいろ人を説得して実現に漕ぎ着けた人たちに敬意を表します。そして、志を一つにした600人の人たちが大宇宙に漕ぎ出してみごとに3億キロ先のりゅうぐうに到達できたことにロマンを感じます。りゅうぐうから持ち帰った土は生命の起源を解き明かす重要なっものだと思いますが、これをやり遂げたチーム力、プロジェクトをそこまで持って行ったプロセスが財産だと思います。ここで得たノウハウを使えば、地球上で起きている様々な難題の解決に活用できると思います。夢を持つことの大切さ、あきらめないで節理や論理に従ってやっていけば不可能と思える夢も実現できることを痛感しました。日本には、こういう偉大な人たちがいることに誇りを感じます。
https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/10853_hayabusa2
http://www.hayabusa2.jaxa.jp/
https://ers.nikkeibp.co.jp/user/contents/2019z1009xtex/index.html
日経 xTECH EXPO 2019の基調講演でJAXAの「はやぶさ2」の話をお聴きしましたので内容と感想をまとめました。
はやぶさのプロジェクトは今までも注目していましたが、今回、講演をお聴きして改めて成しえた業績の偉大さに感服しました。
簡単に言うと3億キロ先の“りゅうぐう”という小惑星の地表に描いた直径100メートルの的に矢を射るということです。気軽に3億キロと言いますが、日本からニューヨークの距離の3万倍、地球を7500周できるとてつもない距離です。りゅうぐうから発信した電波が地球に届くまでに20分かかるそうです。良くこのようなプロジェクトを思いついたと思います。
はやぶさ2の本体の寸法は、1.0×1.6×1.25 mと思ったより小さいのですが、理由はコストだそうです。津田さんは、本当はもっと大きなものを作りたかったと本音を漏らしていました。お金がないから何もできない、と弱音を吐くのではなく、限られたコストの中で出来ることをやるという考え方も良いですね。
このプロジェクトは、今までに誰もやったことがないことばかりで、何をやるにしても参考にする資料がないということでした。でも、前例がないから面白いということもあり、それがモチベーションの源泉になっているということでした。テストの時に、いかに多くの失敗をするかが成功につながるという話がありました。宇宙に行って失敗したら瞬時にゲームセットですからね。
りゅうぐうの重力は地球の八万分の1。物を運ぶのは楽ですが、地表には大きな岩がゴロゴロあって、間違って大きな岩の上に着陸したら一瞬にして計画が御破算になります。そのため、りゅうぐうの上空からターゲットマーカーというボールのようなものをいくつか投げて、思った所に落ちたマーカーを目指して着陸するそうです。着陸したら、筒のようなものを伸ばして、その中で地面に弾丸を撃ち込み、跳ね返ってくる土を採取するということでした。
現在、はやぶさ2は、最後の任務を果たし、帰還の準備に入っているということでした。帰還は2020年の年末になるようです。はやぶさ2を乗せたロケットは2014年の年末に打ち上げられましたので、なんと6年がかりのプロジェクトです。
このプロジェクトの企画や設計をするコアメンバーは10人ですが、メーカーや技術者を含めると600人もの人たちが関わっているそうです。このメンバーを動かしてプロジェクトを間違いなく前に進めていくのは並大抵なことではありません。
これだけのメンバーを動かすためには、どんな組織がにしていくかが重要だということでした。組織づくりで気をつけたことは次のようなことだそうです。
組織は極力フラットにする。リーダーだからと言っても偉いわけでなく、ミッションを遂行するための一つの機能でしかない。重要なのはリーダーに盲従するのではなく、ミッションや節理に忠実になること。フラットな組織は相互承認が速く風通しが良くなるということでした。
仲良しグループになって安易にまとまらないということ。必ず、対立軸を作って批判的な内容の提案を出すように心がけることが重要ということでした。これにより、プロジェクトの暴走が防げて、緊張感と当事者意識が高まるそうです。
組織内においては、責任分界点をはっきりしてそれに忠実に従う。例えばメーカーは探査機の動作に責任を持ち、JAXAはリスクテイクとプロジェクト成果に責任を持つなどです。自分の役割を明確にすることで自信を持ってアイデアを出せるようになるそうです。
リーダーがチームの責任を持つ。議論をし尽して、五分五分の判断になったときはリーダーが最後の決断をして責任を持つそうです。それで、メンバーが安心して仕事をすることができて、いざという時に突破力を出すことができるということでした。
組織は、次の段階を経て成長していくということでした。
① 草創期:ゴールの共有とチーム員個々の能力専門性の研鑽、勉強をする。リーダーの役割は適切な課題を割り当ててメンバーの専門性を見込んで任せること。
② 混沌・衝突期:自己主張をぶつけ合って互いに磨きあう。リーダーは、衝突の調整、課題の再配分、現場のアイデアを積極的に採用して、できるだけ多く失敗することを奨励する。
③ 一人格化・自律化期:互いの専門性を強めあい協働することでチームとして高い自律性と自己成長性を獲得する。この時期になるとリーダーは、権限を委譲してチームメンバーとして作業に参画し、次なるゴールの下準備をする。
④ 収穫期:高度なチームワーク、高度に類型化された分担で成果を量産する。リーダーは、シナリオ管理、課題管理を行い、次なるゴールの設定を模索する。
このようなチームが出来ると、大概のことはリーダーなしで、自律して進むようになるということでした。最終的にリーダーは実務をやりながらマネジメントすることになるのですが、これが重要だと言うことでした。
リーダーの役割は、変化を生み続ける場を提供すること。自分たちの進むべき方向性を示してメンバーのモチベーションやわくわく感を醸成すること、外部に対しては、プロジェクトの華々しい成果だけでなく、今までのメンバーの地道な努力や乗り越えてきた数々の課題を説明し、その先の未来を示すことだそうです。
宇宙探査は、一発勝負で事前に答えが分からない。だから面白い。チームは、ある時は神になって難題を自ら作り、ある時は人となってその問題を解決していかなければならない。そのためには、自分自身の能力を熟知して可能性を信じ、節理や論理に忠実に任務を遂行することができ、難題を突破できるチーム文化が重要ということでした。
感想
とにかく、このような一見無謀な常人は考えつかないプロジェクトを予算化して、いろいろ人を説得して実現に漕ぎ着けた人たちに敬意を表します。そして、志を一つにした600人の人たちが大宇宙に漕ぎ出してみごとに3億キロ先のりゅうぐうに到達できたことにロマンを感じます。りゅうぐうから持ち帰った土は生命の起源を解き明かす重要なっものだと思いますが、これをやり遂げたチーム力、プロジェクトをそこまで持って行ったプロセスが財産だと思います。ここで得たノウハウを使えば、地球上で起きている様々な難題の解決に活用できると思います。夢を持つことの大切さ、あきらめないで節理や論理に従ってやっていけば不可能と思える夢も実現できることを痛感しました。日本には、こういう偉大な人たちがいることに誇りを感じます。
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