久しぶりに面白い本に出会った。「地頭力を鍛える-問題解決に活かすフェルミ推定 細谷功・著」という本である。
親父や祖父の時代に比べたら、我々の生活は便利になった。コックをひねるとお湯がでて、冷凍食品をレンジで温めればいつでもそれなりのものが食べられる。ハンドルを握ればどこにでも行ける。でも、このような生活に慣らされていると、体力や生活力が弱くなってくるのではないかと言う危惧をいつも感じていた。ガスや水道、石油が無くなったらどうなるのか。そんなことを考えるとぞっとする。
これと同じことが、インターネットの世界でも起っているという話が最初に出ていた。検索エンジンを使えば、子どもの宿題でもどんなことでも分かる。検索窓にキーワードを入れてクリックすれば、瞬時に分かってしまう。分かったつもりになってしまう。実は、ここにも便利な生活と同じジレンマが起っているのだという。それは、人がモノを考える力を奪っているのではないかと言う危惧である。
この本は、このような時代に、モノを考える力を鍛えようと言う本である。そこにフェルミ推定というものを持ち出したのが面白い。フェルミ推定とは、日本中に電柱は何本あるか、というような解くのが難しい問いを自分の考えだけで解くものである。電柱の本数が正確である必要はない。どのように考えたかと言うプロセスが重要である。やってみると、これが意外に難しい。グーグルに聞けばすぐに分かってしまうのに自分で考えると簡単ではない。
フェルミ推定の問題とは、こんなものである。
・日本全国にゴルフボールはいくつあるのか?
・国会図書館の蔵書数は何冊か?
・太平洋の水は何リットルか?
文明と言うものは、体力だけでなく、人から考える力をも奪いつつあるようである。iPodを聞きながらのジョギングも良いがフェルミ推定を使って頭を鍛えることも一考の余地がある。
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