子どもたちにせがまれて何十年ぶりかで映画館に行った。そこは昔の暗くて汚いというイメージからは全くかけはなれたものだった。第一印象は大学の講堂か会社のプレゼンルームといった感じでイスや照明が格段に良くなっていた。話題の映画だったので混んでいると思って立ち見も覚悟していたが最後まで空席が埋まることはなかった。
映画の設定は700年後の未来社会。環境汚染が進んで、地球にはゴキブリ以外の生物が住めなくなっている。人間は宇宙船の中で地球がきれいになるのを待っている。何でもロボットまかせの生活を送った結果、自分の力で歩くこともできなくなってカプセルのようなものに乗って生活している。
その汚れた地球の掃除をしているロボットがウォーリだ。宇宙船から送りこまれた美しい探査ロボットのイヴにウォーリは恋をする。イヴにプレゼントした小さな植物をめぐってロボットと人間のあいだで争奪戦が繰り広げられる。人間が勝利し地球に緑の大地が蘇るというハッピーエンドで終わる。
昔のSF映画やマンガに描かれていた未来はバラ色に輝いていた。自家用飛行機が飛び交い、石油や原子力がエネルギー問題を解決し、コンピュータがテクノロジの象徴だった。欲しいものは何でも手に入り、貧困も戦争もない夢のような世界が未来社会だった。
ウォーリには、そんな輝いた未来の姿はない。未来の都会の高層ビルは廃墟になって町はゴミの山になっている。人間はロボットに自由を奪われて家畜のような生活を送っている。そんな未来が来ないように大きく舵を切って、自分たちの生き方を変えていこうと言うのが作者のメッセージだろうが、子どもたちはどこまで理解してくれただろうか。
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